金沢大学 超然プロジェクト×先魁プロジェクト×自己超克プロジェクト

区分1

設計空間を広げる革新的設計製造法に関する国際研究拠点形成

プロジェクト代表者 
古本 達明
所属組織・役職等 
理工研究域 機械工学系 教授
研究分野 
材料力学、生産工学、設計工学
最適設計、材料強度、組紐技術、炭素繊維複合材料、金属加工
Optimal Design, Material Strength, Braiding Technology, Carbon Fiber Composite, Metal Processing

■ 概要 ■ 
自然界に学ぶ工学分野における最適設計法(バイオニックデザイン)、複雑構造部材の製造技術等を活用し、環境・エネルギー等の諸課題に対応する超軽量・高強度・高機能な革新的機械材料創生技術の実証拠点を形成し、各研究分野のけん引と融合を目指す。加えて、各分野の研究をけん引する国際的に著名な研究者らとの連携により、超軽量・高強度・高耐熱エンジン、全置換型人工骨、超軽量足場材の開発等の横断的プロジェクトを展開し、「設計空間を広げる革新的設計製造法」に関する国際研究拠点を構築する。本研究で開発する自然界に学ぶ設計論および機械学習と最適化技術の融合による設計技術、また、金属付加製造(Additive Manufacturing、以後、金属AM)や組紐構造ブレーディング等を用いた製造法は、超軽量かつ高強度な複雑立体構造が得られる世界に類を見ない技術である。今後、これらの技術の応用によって運輸機械や建設機械を始めとする機械工学分野、また、土木工学、建築工学、航空宇宙工学、造船工学などの各分野において、超軽量で、かつ得られた構造体の強度が大幅に改善される革新的な製品開発が期待される。

 

生物の形態を模倣した工学設計技術の研究開発の有効性や重要性は古くから指摘されているが、単なる模倣では、スケール、負荷条件、材料特性などの違いに対応できないという課題が障壁となっている。また生物形態を参照して設計された超軽量・高強度な構造部材は三次元的に複雑な構造を有し、基本素材の成形加工・変形加工・除去加工といった従来の製造方法では成形が困難であり、十分な形態を創成することができない。金属AM技術や炭素繊維などを用いた組紐技術による革新的設計・製造法が確立されれば、各製造技術の特長を活かした軽量化・高強度化が同時に達成でき、世界をリードするオンリーワンの生産技術として、その中心的な役割を果たすことが期待できる。そこで、上述した3つの課題に対応し、以下の研究開発を推進する。

 

(a) 生物形態のデータベースを活用した設計上流部における構造デザイン技術の開発

生物形態の優れた強度特性や力学的最適性を数値解析によって求め、評価指標としてデータベースに入力する。そして、構築された生物形態データベースを活用し、設計条件にマッチした生物形態をデータベースから抽出しながら、人工構造物に反映させる過程で形状や寸法を最適化する技術開発を行う。

 

(b) 生物形態データベースを活用した最適設計技術の開発

データベースを活用した最適設計技術の開発により、効率的な最適設計が行えるプラットフォームを構築する。本研究では、機械学習法を組み込むことで飛躍的に計算効率が向上する新たな最適化法を開発する。複数の生物形態をデータベースとして活用し、多目的最適化を行うことで生物形態とは異なるパレートフロント(複数の最適解)が得られ、より軽量かつ高強度な機械構造が得られる。

 

(c) 金属AM・組紐技術等の複雑構造部材の設計・製造法の開発

上記で得られた最適化されたデータを用いて、金属AMを活用した複雑内部構造の一体造形技術を確立し、必要な部位に必要な強度を有する異方性構造体の製造技術や、内部に構築する多孔質形状の制御による超軽量かつ高強度構造体の製造技術を開発する。さらに、組紐技術を用いて、中空外殻構造(シェル構造)部材の中空部に,骨密度分布に代表される細かな隔壁構造を有する構造形態を一体成形する技術を確立し、軽量化と高強度化が同時に達成できる革新的な製造技術を開発する。

 

本学では、最適設計法や複雑構造部材の製造技術を組み合わせ、設計者の着想から製造までを実現する「バイオイノベーティブデザイン技術」を確立している。工学設計分野では世界初の取り組みであり、生物の模倣ではなく、最適化により新たな構造物を創成する点で従来技術より格段に優れ、非連続なイノベーションを生み出す可能性を有している。本学が有するこれらのオンリーワン技術と、最先端技術を有する海外大学との連携から生み出される成果は、革新的な設計技術やシステムの構築へとつながり、超軽量・高強度・高機能な構造部材の設計から製造までを一気通貫で実現する分野横断型の実証拠点になると確信している。

図1