金沢大学 超然プロジェクト×先魁プロジェクト

区分1

宇宙・素粒子研究の融合によるマルチメッセンジャー天文学の推進

プロジェクト代表者 
米徳 大輔
所属組織・役職等 
理工研究域 数物科学系 教授(リサーチプロフェッサー)
研究分野 
素粒子、原子核、宇宙物理学 天文学
人工衛星、宇宙物理学、重力波、ニュートリノ、暗黒物質
Satellite, Astrophysics, Gravitational Wave, Neutrino, Dark Matter

■ 概要 ■ 
2015年に米国の重力波干渉計LIGO(ライゴ)が史上初となる重力波の直接検出を実現し、2017年のノーベル物理学賞が授与されました。引き続いて、2017年8月17日に発生した連星中性子星の衝突・合体現象では、重力波の検出と同期した電磁波対応天体が観測され、重力波天文学という新たな学術領域が誕生しました。さらに、南極のニュートリノ観測施設IceCube(アイスキューブ)が1015電子ボルトにも達する超高エネルギーニュートリノを検出し、ニュートリノと同期した天体現象も注目されています。このように、重力波・ニュートリノ、さらには暗黒物質のような電磁波以外の情報も含めて宇宙を理解する分野を「マルチメッセンジャー天文学」と呼びます。宇宙物理学と素粒子物理学が協力して推進すべき学問領域と言えます。
本学の宇宙理工学分野は、マルチメッセンジャー天文学の時代が到来することを見越して、金沢大学超小型衛星プロジェクトを推進してきました。本研究プロジェクトでは、研究期間内に人工衛星を打ち上げて、観測体制を整えることを目標としています。そして、一般相対性理論や素粒子物理学の最先端の研究を行っている素粒子・宇宙・理論物理学グループと連携することで、マルチメッセンジャー天文学を牽引する世界的な研究拠点の形成を目指します。本プロジェクトは、金沢大学衛星プロジェクトを中枢として位置づけ、以下の3部門で構成されています。

 

■ (1)衛星開発部門(衛星および検出器の開発) ■ 
金沢大学超小型衛星プロジェクトは、重力波やニュートリノ現象と同期したX線・ガンマ線突発天体を発見し、ブラックホールが誕生する瞬間の物理学や、地上の加速器では作り出せないほどの超高エネルギー現象を観測することを目標としています。重力波やニュートリノ観測による発生方向の決定精度は悪いことから、地上の望遠鏡で追観測することが難しい状況です。そこで、金沢大学衛星では、重力波やニュートリノイベントと同時に発生するX線突発天体を観測することで、詳細な発生方向や発生時刻を特定します。その情報をリアルタイムで全世界と共有することで追観測を促し、マルチメッセンジャー天文学を強力に推進したいと考えています。本プロジェクトでは、2019年度末の打ち上げを目指して観測機器や超小型衛星のフライトモデルを完成させます。また、将来の衛星プロジェクトを目指した基礎開発も推進していきます。

 

■ (2)科学データ解析部門 ■ 
稼働中のスウィフト衛星やフェルミ衛星などの観測データを用いて、重力波源と深く関連している短時間ガンマ線バーストや、ニュートリノ発生源の物理現象を理解していきます。特に、相対論的な速度を持ったジェットのメカニズムや周辺環境について議論し、マルチメッセンジャー天文学の推進に直結する観測成果を示していきます。また、フェルミ衛星の観測エネルギー帯域はおよそ7桁にもわたりますので、様々な素過程で生じる高エネルギー現象を探求するのに適した衛星と言えます。全天をサーベイする能力を生かした暗黒物質探査は素粒子論と直結する研究であり、宇宙物理学と素粒子物理学の分野横断的な研究となります。

 

■ (3)理論物理学研究部門 ■ 
暗黒物質の理解は、素粒子物理学と宇宙物理学の両方に関連する重要課題です。現時点でも、その質量や完全に安定な粒子であるのかという基本的な性質も明らかになっていません。非常に重たい質量の暗黒物質が存在した場合、その崩壊で発生する粒子は超高エネルギーとなり、銀河系外からの宇宙線粒子として観測される可能性があります。近年の超高エネルギーニュートリノの観測により、ますます注目され始めている理論モデルと言えます。銀河系外から飛来する宇宙線・ニュートリノ・ガンマ線などに着目し、暗黒物質の間接探索実験についての理論計算を行います。科学データ解析部門と連携し、新たな着眼点でのデータ解析を推進します。

 

各部門が連携することでマルチメッセンジャー天文学を推進するとともに、金沢大学衛星2号機のコンセプトの創出や、将来の大型衛星ミッションの推進など、永続的にプロジェクトを創成できる体制を構築していきます。また、我々が得意とする「X線・ガンマ線観測」や「超小型衛星・検出器開発」のノウハウを提供することで、諸外国のミッションにも協力していきたいと考えています。

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