金沢大学 超然プロジェクト×先魁プロジェクト×自己超克プロジェクト

レントゲン撮影の真の能力を引き出す定量解析手法

プロジェクト代表者 
林 裕晃
所属・役職 
医薬保健研究域保健学系・准教授
研究分野 
 医学物理学
X線撮影 / フォトンカウンティング型検出器 / X線画像 / X線診断 / 医学物理学
Radiography / Photon-counting imaging / X-ray image / X-ray diagnosis / Medical physics

【目的】
 X線を用いたレントゲン検査は,現代医療の発展に大きく貢献した.レントゲン検査には,被写体の“形態”に関する情報を表現した白黒X線画像が用いられる.しかし,被写体を透過したX線光子全てのエネルギーを一度に計測している従来型のX線検出器では,被写体“組成”に関する情報は得られないため,X線検査で引き出せる被写体に関する情報を十分に活用できているとは言えない.申請者は,X線光子1個1個を計測できるフォトンカウンティング型検出器(ERPCD)を適用した医療用のX線画像検出器の商品化を目指し,基礎研究を行っている.本研究の目的は,ERPCDの実用化に向けた初期検討を行い,課題抽出と解決策を提示する事である.
【研究内容】
 ERPCDを用いたX線撮影には前例がないため,まず,X線画像形成過程を再現するシミュレータを開発し,システム設計を行う.具体的には,X線のエネルギー分布を再現し,被写体中の減弱を計算し,検出器内でのエネルギー吸収過程をシミュレーションするプログラムを自作する.次に,X線画像処理手法に関する研究を行い,被写体辺縁の明瞭化とノイズ除去手法を確立する.さらに,実際のERPCDを用いた試作実験装置を製作し,ERPCDの医療応用における問題点の抽出と課題解決を行う.
【波及効果】
 ERPCDを用いたレントゲン撮影用のX線画像検出器が実用化できれば,X線撮影検査の本来の能力を引き出すことができ,従来の“形態”に関する情報に加えて,被写体“組成”の情報を得ることが可能となる.例えば,四肢の骨折の定性的な診断の際に,骨密度や骨質といった骨の定量的な評価が可能となり骨粗鬆症のスクリーニング検査も同時に行なえるようになる.このように,X線画像で表現できる被写体の状態に関する情報が大幅に増加することで,新しい診断・治療手法開発の礎を築くことができ,医学の更なる発展が期待される.

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