金沢大学 超然プロジェクト×先魁プロジェクト×自己超克プロジェクト

ヒトにおける高次脳機能司令塔の解明

プロジェクト代表者 
木下 雅史
所属・役職 
医薬保健研究域医学系(脳 神経外科)・講師
研究分野 
Neurosurgery( 脳神経外科学) Cognitive and brain science(認知脳科学) Neuropsychology(神経心理)
高次脳機能、脳腫瘍、覚醒下手術、脳波解析、脳磁図
higher brain function, brain tumor, awake surgery, electrocorticogram, magnetoencephalography

 ヒトは、脳の複数の領域(神経細胞)が手を取り合って(神経線維)同時もしくは短時間に活動および伝達処理を行いながら、知覚、記憶、学習、思考、判断などのさまざまな高次脳機能(マルチモーダル認知)が常に活動し生活を営んでいる。高度な脳活動を有するヒト脳では、同時多発的な活動状況から、一箇所のみの高次脳機能中枢となる領域は存在しないと考えられているが、その情報処理プロセスには不明な点が多い。提案者のこれまでの研究により、脳内処理を有する高次脳機能には、半径約1cm程度の小さな司令塔となる領域が存在することがわかった。また、このリーダーとなる領域は各機能によって局在部位が異なること、正常脳環境の破綻をきたすような状況下ではダイナミックな空間的移動による機能損傷回避能を示すことがわかった。すなわち、これまで広範囲な脳内分布が信じられていた高次脳機能ネットワークの常識を覆し、未知であった機能動態の解明につながる重要なヒントとなる新知見である。本研究プロジェクトでは、提案者が得意とする脳腫瘍患者の開頭手術における覚醒下脳機能マッピングと皮質脳波測定、機械学習による高周波数脳波解析、患者および正常人における脳磁計を用いた高次脳機能の動態解析を行う。さらにさまざまな高次脳機能に関して、①司令塔の局在、②情報処理ネットワーク、③可塑性のメカニズムについて、ヒトの脳において直接的な評価・解析・検証を目的とする。本研究により、症候学的な診断が主体であった高次脳機能障害の定義が機能解剖学的に再確立され、脳磁計を用いた高次脳機能障害の画像診断が可能となる。脳卒中や外傷などの器質的脳損傷のみならず、うつ病や統合失調症などの機能性脳疾患によって生じた高次脳機能障害の診断と回復促進リハビリテーションプログラムの開発につながる。ヒトが人間らしく生きる上で重要な高次脳機能に関わる診断・予防・治療への貢献が期待できる。

Figure-kinoshita