金沢大学 超然プロジェクト×先魁プロジェクト×自己超克プロジェクト

古代文明の学際研究の世界的拠点形成

プロジェクト代表者 
河合 望
所属・役職 
新学術創成研究機構 教授
研究分野 
Archaeology(考古学)
考古学、古代文明、考古科学、文化遺産、学際研究
Archaeology, Ancient Civilizations, Archaeological Science, Cultural Heritage, Interdisciplinary research

■ 概要 ■
本プロジェクトは国際文化資源学研究センターの形態文化資源部門と新学術創成研究機構・文化遺産国際協力ネットワーキングユニットの研究力を基盤とし、金沢大学が我が国で突出する分野である世界の古代文明の考古学的研究を先鋭化し、他の日本の大学には類をみない自然科学との学際融合研究とこれまで超然プロジェクトで培ってきた「文化資源マネジメント」の取り組みを糾合させる国際的な研究拠点の形成を目的とする。また、本プロジェクトは、研究のみならず、教育および国内外への発信の拠点を目指しており、メンバーが所属する人文学類、大学院人間社会環境研究科、大学院新学術創成研究科において類をみない教育プログラムの確立を試みる。

 

■ 特色と優位性 ■
金沢大学は、特に海外をフィールドとする考古学的研究の分野で数名の研究者を擁しており、すでに日本国内ではトップクラスの地位にある。中国考古学の中村慎一教授、マヤ考古学の中村誠一教授、西アジア考古学の足立拓朗教授、エジプト考古学の河合望准教授は、科研費などの外部競争的資金を獲得し、長年にわたって現地での発掘調査を継続し、世界的な研究者として認知されている。金沢大学の考古学分野での科研費獲得率は、人文科学の分野で他分野に比べ突出しており、東京大学に次ぐ第2位であった年度もあった

 

また、金沢大学の考古学研究者は、従来の伝統的な考古学的研究のみならず、国際文化資源学研究センターを中心とする活動で培った「文化資源マネジメント」を積極的に推進し、文化遺産の記録・保存・修復・その継承を図りながら未来に向けた活用の方策を探る取り組みを続けてきた。具体的には、中村誠一教授は、中米グアテマラで国際協力機構(JICA)のプロジェクトとして「世界複合遺産ティカル総合プロジェクト」を推進し、河合望准教授は、同じJICAの「大エジプト博物館合同保存修復プロジェクト」の考古学の専門家として参画している。

 

近年国際文化資源学研究センターおよび新学術創成研究機構では、考古学との学際研究を推進する自然科学分野のトップクラスの研究者が加わり極めて重要な研究成果を挙げている。例えば、覚張隆史特任助教は、約2500年前の縄文人の人骨に含まれる全ゲノム(遺伝情報)を解析した結果、約8千年前の東南アジアの遺跡で出土した古人骨から得られたゲノム配列と似ていることを明らかにし、米科学誌「サイエンス」に論文を発表した。神谷嘉美特任助教は、漆文化財の科学的研究でトップクラスの研究者であり、中村慎一教授が進める新学術領域研究に参画し、中国新石器時代の漆遺物の研究でこれまでの研究で画期的な成果を挙げている。以上のように金沢大学の考古学研究者は、世界的に突出した研究活動を推進しており、本学において重点化を図る研究集団として遜色ない。また、本プロジェクトでは、我が国で唯一の古代文明の考古学研究の拠点を形成するために、金沢大学の研究者ではカバーできない古代文明の考古学を推進するため、国立民族学博物館、独立行政法人東京文化財研究所等と連携し、本プロジェクトを実施する。

 

■ 将来構想 ■
金沢大学は、日本国内でトップクラスの海外考古学の専門家が所属する研究機関であり、本プロジェクトを通じて、さらに考古学の研究および教育の先鋭化を目指す。現在は、参画するメンバーは人間社会学域附属古代文明・文化資源学研究センターおよび新学術創成研究機構に属するが、米国ニューヨーク大学にある「Institute for the Study of the Ancient World(古代世界研究所)」のような国際研究機関に高めるため、海外の研究者を招聘し、これまで以上にセミナーやシンポジウムを活発に開催し、客員教授や訪問研究員を招聘する。さらに欧文の国際学術雑誌への論文投稿や国際学会の発表を恒常化させたい。また、新学術創成研究機構や新学術創成研究科での分野融合の機会を生かし、これまで人文系の分野として位置づけられてきた考古学を総合科学として発展させる。そのような意味で金沢大学は、日本の大学の中で最も優位な環境にあると言っても過言ではない。

挿入図